その名も熊五朗(kumagorou)

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     今日はある青年について話したい
    僕の後輩であり友人だ。
    「熊五朗」と覚えていただきたい。
    まっすぐな奴で熱いハートは男の中の男だ。
    つい先日某格闘技団体の無差別でトロフィーを手にした
    現役のキックボクシングの選手だ。
    彼とはもともと僕がボランティアで運営していた
    ボクシングファイトクラブの練習生として出会ったのがきっかけ。
    ベースはガチガチの空手家として出来上がっていて
    打撃を覚えたいという目標を掲げ
    熱心にわが貧乏ジムに通い続けてくれた。


    お互い格闘技が好きで練習後も随分格闘技談議に花が咲いたのものだった。
    今やそのジムも練習生が進学や就職、
    自分の仕事の多忙さも重なってやめてしまったが、
    毎年新年になると元旦早々、
    必ず挨拶の電話をよこしてくれる律儀な奴だ。
    そんな男はそういない。そのたびに熱く胸を打つんだな。

    実は5年近くその電話以外接点もなかったが、
    食事に出かけた先でばったりと彼と出会った
    仕事の作業衣を着ていた彼が連れていたのはおばあちゃんだった。
    誕生日のお祝いにと食事を御馳走したらしく
    それも熱く胸を打つんだな。まいるな
    深々と僕にお辞儀をしておばあちゃんを紹介してくれて
    自分の試合にぜひ来てほしいと招かれたわけだ。
    鼻も折れ曲がっていて有名ジムに通って随分練習しているのが見て取れた
    そんな嬉しいことはない。僕よりはるかに大人だな。

    そして試合観戦

    我こそはと出場する選手がミットをバシバシ打ち込んでいた
    そんな中、試合前にわざわざ声をかけに来てくれた
    実は彼はあばらにひどくヒビが入っていて本来ならできない状態だった。
    だが、無理を承知で勝利に燃えていた彼を止める理由にはならなかった
    経験がある人はお分かりいただけるだろう。咳一つできやしない。
    対戦相手は実際には1ランク上の階級で彼よりデカいときた。
    首相撲でヒザををもらったら即入院だ。

    それでも彼には戦う理由があった。
    彼の愛するおばあちゃんが癌を発病したのだ・・・・
    そう、食事の時に孫に連れてこられて
    本当に嬉しそうにしていたおばあちゃんだ。
    実はもう一方でそのおばあちゃんを見舞う生活の変化が、
    心通い合うことのなかった父親との距離を
    近づけるきっかけとなったのだ。
    彼とはともに汗を流し全力で練習してきた仲だが、
    思えば家族の話を聞いたことがなかった。
    それは話すことがないほど彼の生活は家族から離れていたのだ。
    そんな彼は今やおばあちゃんに勝利の杯を贈るために
    リングに上がる。
    癌との戦いに自ら勝利をもたらすために

    実はその日、親父さんも招かれていた。
    口を開けば喧嘩しかしなかった親父さんとの距離は
    離れたままだったのに
    無口で真面目一本で堅実に働いてこられたサラリーマン典型
    と彼は自分の父親を評した。
    親父さん自ら息子にチケットをよこせと言われた彼は
    まんざら嫌ではなかった、というよりこっぱずかしかったのだ
    きっと本当はお互い嬉しかったに違いない。

    実に30年の空白を経て父親と息子は新しい親子の絆を取り戻したのだ。


    そのトロフィーは父親にそしておばあちゃんに手渡された。

    彼の拳は、家族を一つにした。
    彼が多くのファンに愛される理由がそこにある。



    我ら応援団は熊五朗と共に!







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